フィルタープレスは、液体中に混ざっている固形物を分離するために使われる装置です。例えば、化学工場での製品製造や食品工場での濃縮液の処理などに使用されます。また、環境保全を求める社会的背景もあり、工業分野などの排水処理にも使用されています。この記事ではフィルタープレスの特徴や原理を踏まえ、選定ポイント、業界別の用途事例について解説します。
フィルタープレスの特徴
フィルタープレスは高圧で圧搾することが出来、ケーキ含水率が他の脱水機と比較して低くなります。
大型化も可能で大規模な処理量にも対応可能です。バッチ処理のため効率性に劣る部分もありますが、1回の処理量を増やせば処理効率の欠点をカバーすることも可能です。フィルタープレスは製造ラインにも組み込めることから、多くの工場でろ過・脱水用途に利用されています。
フィルタープレスの原理
フィルタープレスは「ろ過装置」の一種です。ろ過には「重力ろ過」「真空ろ過」「加圧ろ過」という3つの代表的なろ過方法があり、フィルタープレスは加圧ろ過に分類されます。ここでは、フィルタープレスの基本原理と固液分離のメカニズム、分離精度の特徴について解説します。
フィルタープレスの基本的な原理とは?
構造は、フロントフレームと油圧シリンダーを組み込んだリアフレームがあり、両サイドのレールを連結しフレームを形成します。両サイドのレールの上に複数のろ板を設置します。ろ板とダイアフラムを表面に取付けたダイアフラム板を交互に配置します。ろ板とダイアフラム板の間にはろ布が設置されます。
油圧シリンダーにてろ板を締め付けろ室を形成します。スラリーをろ室内に圧入し、ろ過します。スラリーとは「液体に固体の粒子が分散した混合物」を意味します。固形分はろ布により捕捉され、ろ室内でケーキ化されます。ろ液はろ布を通過して機外へ排出され、ろ過脱水をおこないます。さらにダイアフラム内に流体を注入して圧搾し含水率を低下させます。ろ過脱水後のケーキ剥離時にも油圧シリンダーを駆動させ、ろ板を開板します。
フィルタープレスによる固液分離のメカニズムとは?
ろ過のように、混合した状態にある固体と液体を分けることを「固液分離」といいます。フィルタープレスはどのようなメカニズムで固液分離をおこなっているのでしょうか。以下の6つの工程に分けて説明します。
フィルタープレスの長所と短所
長所
① ケーキ含水率が低い
ダイアフラム圧搾を用いることで、2MPa以上の高圧で圧搾することが出来、ケーキ含水率が他の脱水機と比較して低くなります。
② 大きなろ過面積を有することが出来、大規模な処理量にも対応可能
ろ板1枚のサイズも一辺500~2,000mm の範囲で制作が可能です。また、脱水機1台に設置可能なろ板の枚数は最大で100枚程度が可能で、処理量に合わせて脱水機の大きさを選定可能です。真空脱水機が最大50㎡程度のろ過面積に対して、フィルタープレスでは、500㎡以上の対応が可能です。
短所
① バッチ式であり、ケーキ剥離工程やろ布洗浄工程などのろ過工程以外の時間が必要
② 連続式脱水機と比べて、同一処理量あたりの設置面積が大きい
フィルタープレスの選定ポイント
ろ過脱水機には、フィルタープレス、真空脱水機、ベルトプレス、スクリュープレスなどいろいろな特徴をもったろ過脱水機があります。これらの特徴を良く把握した上で機種を選定していく必要があります。低含水率と処理量を求めるならフィルタープレスが最適です。
スラリー性状の把握
スラリー性状によっては、ろ過脱水性能に大きく影響します。原液の濃度、pH、温度、粘度、粒子径なども把握して機種を選定しましょう。
ろ布の選定
フィルタープレスは汎用性が高く、幅広い濃度あるいは粒度のスラリーに対応できます。ろ液の清澄性などを確認し、スラリーに合わせてろ布を適切に使い分けることが重要です。
運転コスト・メンテナンス性
フィルタープレスは、頻繁にろ布を交換することがなければ、ランニングコストは比較的安価です。
製造ライン上での自動化もでき、人件費の削減にも寄与します。また、脱水ケーキの含水率が低いフィルタープレスは、脱水ケーキにかかる乾燥や産廃処理コストも抑えやすいです。
型式 | フィルタープレス | スクリュープレス | 多重円板型 | 真空脱水機 | 遠心脱水機 |
---|---|---|---|---|---|
方式 | バッチ | 連続 | 連続 | 連続 | 連続 |
原液変動 | ○ | × | × | × | × |
ケーキ処理費 | ○ | △ | △ | × | △ |
電力費 | △ | 〇 | 〇 | × | × |
薬品費 | ○ | × | × | △ | × |
洗浄水使用量 | × | ○ | ○ | × | ○ |
メンテナンス性 | △ | ○ | △ | 〇 | × |
業界別のフィルタープレスの導入事例
●化 学
カルシウム、マグネシウム、ジルコニウム、アルミニウム、チタン、セラミック、電池材料・触媒、医薬原料、顔料・染料、農薬・肥料、有機化合物(アルコール類、タンパク質、合成樹脂、ゴム類)
●鉄 鋼
高炉・転炉廃水、圧延・鋳造廃水、冷延廃水、表面処理廃水
●非 鉄
金、銀、リチウム、ニッケル、鉛、亜鉛、銅
●食 品
アミノ酸、澱粉、醸造、製糖、油脂、精製
●産 廃
主灰・飛灰、浸出廃水、各種廃水
●産業廃水
半導体・電子、電力、自動車、メッキ、製紙・パルプ
●官公庁
浄水場、工業用水
※(株)富士経済「2021年版 水資源関連市場の現状と将来展望」(2020年実績)