株式会社 石垣

脱水ケーキの種類・特徴・製造プロセス・活用事例|問題点への対策も解説!

脱水ケーキの種類・特徴・製造プロセス・活用事例|問題点への対策も解説!

脱水ケーキは汚泥の水分を除去する過程で作られる副産物です。焼却後に埋立処分するケースが多いですが、建設資材や肥料、燃料として再利用することもできます。今回は脱水ケーキの種類や特徴、製造プロセス、活用事例を詳しく説明し、脱水ケーキを扱う上での問題とその対策についても解説します。

脱水ケーキとは

脱水ケーキとは、汚泥を脱水した半固形物のことです。浄水場や下水処理場で取り出される汚泥は水分を多く含むため、脱水ケーキにして含水率を約65〜85%まで下げ、あとの処理を容易にします。

汚泥は泥状の産業廃棄物全般を指し、食品工場や下水処理場(活性汚泥法)、紙・パルプ工場などで排出される「有機性汚泥」と、金属メッキ工場や土木事業、浄水場などで排出される「無機性汚泥」があります。

有機物が多く含まれる有機性汚泥は、腐敗して悪臭の発生源となります。さらには細菌や病原体などの繁殖の場となっており感染症のリスクも高まるため、放置するのは衛生的に問題があります。早急かつ適切に処理しなければなりません。

汚泥の処理方法としては焼却処分が一般的ですが、脱水前の汚泥は水分量が多く、燃焼効率が落ちてしまいます。脱水ケーキに加工して水分を大幅に減少させれば、スピーディに焼却することができます。体積と重量が縮小されて保管・運搬もしやすくなるため、コスト面や環境面での恩恵も大きいです。

脱水ケーキの種類

脱水ケーキは発生源や成分、処理方法によって、さまざまな種類に分類されます。具体的には、一般下水、し尿、農業集落排水、ごみ処理系、雑排水系、洗煙排水系などです。工場で発生する有機性汚泥や無機性汚泥が元となっている脱水ケーキもあります。また、下水系では一般的な下水(混合生汚泥)、消化汚泥、OD法脱水汚泥※といった分類もあります。

脱水ケーキの代表的な種類ごとの含水率と成分割合は次のとおりです。

種類(発生源) 含水率 固形分中の成分割合 その他の含有物質など
有機分 無機分
一般下水 65~85% 70~90% 10~30% 砂分、繊維
し尿 80~85% 70~90% 10~30% 繊維
食品工場(有機性) 80~90% 80~90% 10~20%
金属工場(無機性) 40~80% ほぼ0% ほぼ100%

脱水ケーキを取り扱う際には、種類によって含水率が異なることを把握しておきましょう。含水率は脱水ケーキの特徴と関わってきます。

※OD法(オキシデーションディッチ法):最初沈殿池を設置せず、周回水路に下水を注入して機械攪拌による循環で処理する方法

脱水ケーキの特徴

脱水ケーキの特徴は、含水率と深い関係があります。ここでは、脱水ケーキが持つ2つの特徴について解説します。

脱水ケーキの重量

脱水ケーキは含水率が高いものほど、1%あたりの水分量が大きくなります。たとえば、含水率90%の脱水ケーキは、含水率が10%下がるだけで総重量が半分程度になります。

下表は、脱水ケーキ中の固形分を10kgとした場合の、含水率ごとの水分量·総重量を計算したものです。

含水率(%)固形分(kg)水分量(kg)総重量(kg)
901090.0100.0
851056.766.7
801040.050.0
751030.040.0
701023.333.3
651018.628.6
601015.025.0
551012.222.2
501010.020.0

含水率が90% → 80%、85% → 70%、80% → 60%などに下がると総重量を半分まで減らすことができます。含水率を90%から70%まで下げることができれば、総重量はわずか3分の1です。この法則は固形分の重量が変わっても成り立ちます。

脱水ケーキの流動性

脱水ケーキはペースト状の流体といえますが、流動性は非常に乏しいです。通常、脱水ケーキは含水率が下がるほど流動性が低くなり、逆に含水率が上がると流動性も高まるという性質があります。軽量化と焼却の効率化を考慮すると、脱水ケーキの含水率は可能な限り下げたほうがよいのですが、流動性が低くなってポンプでの移送が困難になることに留意しなければなりません。脱水ケーキの流動性を確認したい場合、一般的な粘度計での計測は難しいため、実際に圧送設備を通してみる必要があります。

脱水処理方法

代表的な脱水処理方法は「フィルタープレス脱水」「真空脱水」「遠心脱水」「ベルトプレス脱水」「スクリュープレス脱水」の5つです。以下、それぞれの方法を説明します。

フィルタープレス脱水

フィルタープレス脱水は、油圧シリンダーでろ板を締付けろ室を形成します。スラリーをろ室内に圧入しろ過することで、固形分はろ布により捕捉され、ろ室内でケーキ化されます。ろ板表面に取付けたダイアフラム内に流体を注入して圧搾し、さらに含水率を低下させます。構造的に処理容量を増やしやすく、製造ラインへの組み込みも可能で、化学工場での製品製造や食品工場での濃縮液の処理などに使用されています。

真空脱水

真空脱水では、主に連続真空脱水機が用いられます。真空ポンプでドラム内部を負圧にして、回転ドラムの外周に巻いたろ材やろ布に通して汚泥から水分を取り除く方法です。ろ材・ろ布の上に脱水ケーキが形成されるので、それをかき取ります。真空脱水は、薬品注入による調質なしで脱水をおこないたい場合に有効な方法です。

遠心脱水

遠心脱水とは、遠心力を活用して汚泥の脱水をおこなう方法です。汚泥処理においては、回転筒とスクリューの二重構造になった遠心脱水機が主流となっています。遠心力で回転筒の内壁に堆積した汚泥が、回転速度の異なるスクリューによって水切りされながら脱水ケーキになって排出される仕組みです。分離された水は逆方向から放出されます。

スクリュープレス脱水

スクリュープレス脱水は、らせん状のスクリューが回転することで、汚泥がスクリーン(円筒の内壁)を移動しながら脱水される方法です。スクリューとスクリーンの隙間が先端に行くほど狭くなっていて、徐々に圧搾力が強まっていく構造になっています。脱水された水分はスクリーンの小さな穴から排出され、脱水ケーキがスクリーンの端から押し出されます。

ベルトプレス脱水

ベルトプレス脱水は、2枚のろ布で汚泥を挟んで圧縮し、脱水する方法です。汚泥がろ布に挟まれたままジグザグに配置されたせん断圧搾ロールの間を通り、圧搾とせん断の原理によって段階的に脱水されていきます。工程の最後で脱水ケーキとなり、2枚のろ布が分離する際にスクレーバによって除去されます。

脱水ケーキの問題点と対策

汚泥のまま処理するよりも脱水ケーキにしたほうがメリットは多いのですが、問題点がないわけではありません。ここでは、脱水ケーキの問題点とその対策方法について解説します。

移送の難しさ

脱水ケーキは流動性が低いため、パイプで移送するのが困難です。場合によっては外部からの動力などを利用して、強制的に脱水ケーキを押し込む必要があります。また、脱水ケーキは配管通過時の摩擦抵抗が大きいため、配管全長の短縮や配管直径の拡大、潤滑剤の注入といった対策が有効です。

環境への配慮

脱水ケーキの処理においては、CO2の排出を最小限にに抑えるための対策をとることが重要です。

産廃処理コスト

脱水ケーキが完全に処分されるまでに複数の工程を経るため、相応のコストが必要です。最終処分場への持ち込み費用は、一般的に1トンあたり10,000〜25,000円です。含水率を下げることで、産廃処理コストを抑えることができます。そのため、適切な脱水方法を選択することが重要です。脱水処理後に熱風などで乾燥させて脱水ケーキの含水率を下げる場合もあります。

脱水ケーキの利活用の重要性

脱水ケーキは、近年の脱炭素社会への取り組みが進められている中で、再生可能エネルギーとしての重要性が高まっています。脱水ケーキを有効利用する方法が確立すれば、産廃処理コストを削減すると同時に、カーボンニュートラルの実現へと大きく前進できるでしょう。

たとえば、脱水ケーキによっては発酵時に発生するメタンガスをバイオマス燃料として活用ができます。近年は脱炭素社会に向けた取り組みとして、下水道バイオマス利用の機運が高まってきました。「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」などの法整備が進み、国土交通省からは下水汚泥エネルギー化技術のガイドラインも出されています。

脱水ケーキの利活用の用途例

脱水ケーキの多くは、焼却後に廃棄物として埋立処分されるものの、適切な処理をおこなえば再利用できる場合もあります。脱水ケーキの溶湯スラグや焼却灰は、建設資材として路盤材やコンクリート骨材、セメント原料として利用されることが多いです。また、有機物を多く含む脱水ケーキは、発酵させれば肥料や土壌改良材となります。これらは緑地や農地で有効に活用されています。

また、高温乾燥させた脱水ケーキを固形燃料化する技術も開発されており、汚泥処理方式の選定において、消化と下水汚泥固形燃料化を高く評価している自治体もあります。固形燃料化のニーズに応えて、低含水率の脱水ケーキを製造できる脱水乾燥システムも登場しています。脱水ケーキを固形燃料化して発電するほか、熱分解ガス発電やバイオマス発電にも利用可能です。

持続可能な社会を目指す中で、脱水ケーキの利活用の方法や技術はさらに進化し、その用途も広がっていくでしょう。

フィルタープレス式脱水機の紹介